2018年10月5日に国立がん研究センター希少がんセンターにて「腺様嚢胞がんと頭頸部の希少がん」が開催されました。先日セミナーの動画が公開されましたので、視聴とともに内容を確認してみましょう。
希少がんMtE動画まとめ
国立がん研究センター中央病院 頭頸部腫瘍科 吉本世一先生の講義
頭頸部がん
世界的にみると頭頸部癌はがんの中で6番目に多い
多いのはアジア、インド、アフリカ
→口腔衛生、タバコが原因
医師の葛藤:治したいけど治療すればするほどQOLの低下
頭頸部がんの約2%が腺様嚢胞がん
- 学会登録されている頭頸部がん9524例中腺様嚢胞がんは181例(1.9%)
- 学会登録されているのは全体の50%なので全国で年間400人いると予測
- 女性の方がやや多い
腺様嚢胞がんは大唾液腺の顎下腺が一番多い
- 顎下腺>耳下腺>舌下腺の順に多い
- 舌下腺は口の中にあるので口腔底がんの大多数は舌下腺がんの可能性あり、ということは顎下腺と同数かも?
大唾液腺の病理の診断名は20パターンある
大唾液腺で最も多いがんは?(2014年の統計)
- 唾液腺導管がん
- 腺様嚢胞がん
- 粘表皮がん
腺様嚢胞がんの特徴
- 局所浸潤が強く、特に神経に沿って入っていく(神経浸潤)
- 肺に遠隔転移する可能性は18〜70%(長くフォローすればするほど、数値の幅が広くなる)
腺様嚢胞がんが高度悪性に分類されない理由
緩徐(ゆっくりした進行しない状態)に進行することから、腺様嚢胞がんは中程度の悪性とされている
肺転移しても無症状で平均5〜7年、20年生存する
局所再発:26〜36%
遠隔転移:18〜50%
5年 | 10年 | 15年 | 20年 | |
粗生存率 | 68% | 52〜65% | 28% | |
疾患特異的生存率 | 80〜90% | 75% | 40% |
※粗生存率にはがん以外で亡くなった方(特に高齢者)を含む
腺様嚢胞がんの治療
- 局所治療が大切→拡大切除して放射線治療
- 骨の近いところは壊死するので粒子線より手術
- 遠隔転移の場合は化学療法
緩和治療
- 骨転移には緩和照射(痛みによく効く)
- 長期のフォローアップ
- メンタルケア
- 痛みのケア
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科 米盛勧先生の講義
「薬物療法は効かない」は誤解
情報量が少なくて一定の見解がないことが原因
薬はいつやるの?
→答えはない
担当医師と個々の社会的背景も含めじっくり相談すること
希少がんは遠方でもがん拠点施設で治療をおこなうのがベスト
ディスカッション
腺様嚢胞がんのオプジーボの治療成績
実績が蓄積されていない
→一般の診療では実施されない
インターネットの情報が全て正しい訳ではない
遠隔転移の治療について
- 遠隔転移は単発で終わることはない
- 時期を遅れて出てくる
- 小さなものを取ったことにより寿命が延びるかは実証されていない
吉本先生の意見:治療は勧めない
新薬の開発について
腺様嚢胞がんは患者が少ない、進行が遅いことから
製薬会社は腺様嚢胞がんに対する動きは鈍い
希少がん Meet the Expert 2019開催決定
2018年に続き、10月に腺様嚢胞がんをテーマに講演がおこなわれます。
既に募集は始まっておりますので、参加ご希望の方はお早めにお申込みください。
【第52回】頭頸部の希少がん~腺様嚢胞がん・聴器がん~
- 日 時 2019年10月4日(金)19:00-20:30
- 講 師 吉本 世一 先生(希少がんセンター/中央病院頭頸部外科長)
- 参加費 無料
- 募集人数 50名