2017年9月に3泊4日の座禅修行に行ってきました。
宝泉寺との出会いは、2017年5月に放送されたNHK番組「ドキュメント72時間」
当時、生きる目標が見つからないことに漠然とした不安を抱えており、ヒントを求めて修行に申し込んだのです。
京都宝泉寺での修行内容を公開
宝泉寺に入山後、受付や説明をしてくださるのは常住さんです。常住とは3ヶ月以上の修行をおこなう人のことを言い、修行者の指導とまとめ役をしてくださいます。その年齢は18歳から25歳前後と非常に若い世代の方でしたが、役割分担ができており、常住の指導のもとで初心者でも修行に取り組むことができます。
修行一日目のスケジュール
14:45 入山受付後、施設案内、食事作法説明など
16:30 堂内作法説明
16:55 新到参堂(自己紹介)、小座禅
17:00 薬石(夕食)
18:10 法話(火曜・土曜のみ)
19:00 座禅指導後、座禅
20:30 自由時間(入浴)
22:00 消灯
一日目は非常に忙しいです。修行者は修行規則を覚えなければいけません。特に食事作法は一度に覚えられるものではなく複雑です。
個人的には食事作法が一番の修行だと感じたほどです。食事作法は映像で説明があるのですが、これを見てしっかりと覚えてください。夕食である薬石は緊張の連続となります。
食事について
朝食と夕食については、食事作法に従っていただくことになります。座席はあらかじめ決められており、席順は毎日変わります。
1日目、2日目は作法に慣れている修行者、もしくは常住の前に座り、作法を教えてもらいます。言葉を発するのはNGなので、動きを真似ながら体で覚えていきます。特に1日目は一人で勝手に動かないこと。指導を受けた際は「はい、ありがとうございます」の言葉を忘れないことが大切です。
3日目以降は教える側の立場になることがあります。教える側にまわされた時、非常に不安でしたがベテラン修行者の隣に座ることになり、確認しながらその場をしのぐことができました。
- 粥座(朝食)・・・おかゆが主食で副菜2品とたくあん
- 薬石(夕食)・・・大椀(ごはん)、中椀(汁物)、小椀(おかず2品とたくあん)
昼食はバイキング形式
昼食に食事作法はなく、お喋りを交えながら楽しく食事をすることができます。
内容はバイキング形式で、主食はパスタやピラフといった洋食がメインで、毎回おかわりするほど美味しかったです。
食事作法
食事の作法は複雑です。ここでは作法の一部をご紹介したいと思います。
私語厳禁、音を立ててはいけない
- 汁物をすする音
- お椀やお箸を置く音
- 鼻をすする音※
※食事前の座禅直前に、鼻をかむようにしてください(座禅中も鼻水、鼻息はNG)
食べる順番をまもる
左から順に大椀(ごはん)→中椀(汁物)→小椀(おかず2品とたくあん)
その後は自由にいただくことができます。
残してはいけない
食べ物を残してはいけないので、最初は少なめにすることをおすすめします。
全員が食べ終わるまで正座で待つ
食事の時間は正座になりますので、正座が苦手な方は非常に厳しい時間になります。全員が食べ終えるまで、次の行動に移すことはできないのです。
食事のスピードが遅い方は、慣れるまで量を控えたほうがよいかもしれないですね。
たくあんで器を洗い、お湯を飲み干す
- 食べ終わると、大中小の器(持鉢)を洗うために、たくあんを一枚残しておきます。
- 食器を洗うため、前の人にお湯を注いでもらいます。私語厳禁のため、お湯の注ぎ具合は手のひらを上げ、「十分です」と知らせます。
- たくあんで器を拭き、ほかの器にもお湯を移して同じように拭きます。
- 拭き終えるとたくあんを食べ、残ったお湯で小さい方から順番に器をお湯につけてくるくる回しながら洗っていきます。
- 最後にお湯を飲み干します。
一日目の感想
座禅修行1日目終了〜
緊張の連続でどっと疲れた。特に食事は修行そのもの。沢山の作法を学びながらの食事は美味しさを味わう余裕もない。最終日には余裕が生まれますように…— まりも (@suisui_marimo) 2017年9月23日
住職の座禅説明終了直後、足の痺れで直立のまま倒れてしまった…恥ずかしいやら、情けないやら、いろんな気持ちが入り乱れたまま座禅スタート。無になれなかったのは言うまでもない_| ̄|○
— まりも (@suisui_marimo) 2017年9月23日
修行2日目以降のスケジュール
5:20 開静(起床)
5:40 八段錦(太極拳)
6:00 座禅(25分×2)
7:00 朝課(お経)
7:20 掃除
7:50 粥座 (朝食)
9:00 作務(畑仕事や草むしり等)
12:00 斎座(昼食)
12:40 自由時間(外出可)
17:00 薬石(夕食)
18:45 仏教聖典拝読
19:00 座禅(25分×3)
20:30 自由時間(入浴)
22:00 開枕(消灯)
修行2日目は常住さんの鐘の音で起床。起床から約15分で身支度を整えます。その後、常住さんの指導の元で八段錦、簡単に言うと朝の体操です。
次に座禅、本堂にて朝課(お経)、掃除を終えてようやく朝食です。
自由時間について
自由時間は2回あります。
昼間の自由時間は約4時間あり外出できます。遠方からの修行者は、この時間を京都観光に使われた方もいらっしゃいます。
他には洗濯をしたり、昼寝、図書室で読書、食堂(談話室)でお喋りなど、過ごし方はさまざまです。
私の場合は・・・
2日目…食堂でお喋りしていた修行者と亀岡のアルプラザでお茶→入浴
3日目…昼寝→入浴→食堂で修行者とおしゃべり
夜の自由時間は、座禅後にあります。禅堂から降りると、常住さんがお菓子とお茶を用意してくれています。お菓子を食べながら、修行者と語らう時間は楽しく、貴重な時間です。
また修行一日目の修行者は、この時間帯に入浴時間が割り振られています。談話室にあるホワイトボードで確認することをお忘れなく。
お風呂(シャワー)について
施設にはお風呂(浴槽)はありません。シャワー室が4部屋あり、予約制となっております。昼間の自由時間帯は一人30分、夜の時間帯は一人20分枠となりますので、ゆっくりシャワーを浴びたい方は昼間の入浴をお勧めします。
修行中の服装
修行中は伸縮性のある動きやすいものを選んでください。毎日座禅がありますので、ジーンズはおすすめしません。
また作務といわれる労働の時間があります。畑仕事や枯れ木の処理、草むしりをおこないますので、汚れてもよい服装を心がけてください。
また修行中、靴下ははきません。裸足で過ごしますのでサンダルは必須です。私が参加したときは、ジャージやスエットにTシャツ、クロックス姿が多かったです。
アクセサリーは禁止ですが、腕時計はつけても大丈夫です。
女性の方はお化粧は禁止です。入山初日に説明がありますので、座禅開始前に化粧を落としましょう。
修行最終日、最後の挨拶
修行最終日、下山者は修行者の前で挨拶をすることになります。話すことは決められていませんが、ここに来た理由を話される方が多く、さまざまな悩みを抱えて自分に向き合うために修行をされていたんだなと感じました。
そして私自身もその一人でした。修業期間中、私はがんであることを言わずに修行生活を送っていました。たった4日間の修行に、私ががんであることを公表する必要はないと思ったからです。
しかし修行が終わりに近づいた時、私が修行にきた本当の理由を言わずに修行を終えるのは、修行を共にしてきた仲間に失礼ではないか、と考えるようになったのです。
下山する仲間は5名。一緒に入山してきた仲間の挨拶を聞いた後、最後は私の番となりました。
私が修行にきた理由、がん患者であることを話すと、目の前の仲間が真剣に私の話に耳を傾けてくれていることがわかりました。そして最後に、再び悩んだ時にはこちらに戻りたいこと、宝泉寺で皆さんに出会え、感謝していることを告げて終わりました。